ラッサ熱
 リベリア、ギニア、ナイジェリアなどの風土病で、毎年50万人ほどが感染し、その30%が発症しています。ギニアでは、住民の1/4〜1/2が免疫を持っている(一度感染している)と言われています。前述の出血熱より症状はマイルドで出血も軽いことが多いのですが、1〜2%の患者は、脳症やショック状態を起こし死亡します。難聴を起こす人が多く、1/5弱の人に難聴の後遺症が残ります。C型肝炎の治療薬であるリバビリン(レベトール)が有効とされ、現在ではほとんどの患者がこの薬で治療を受けています。日本でも熱帯医療関連の施設で、この薬は保管されています。

マールブルグ病
ウガンダから輸入したアフリカミドリザルから人への感染が旧西ドイツのマールブルグで起こったもの。エボラ出血熱と似たタイプのウイルスです。大流行せずその後は散発的にジンバブエ、ケニア、ザイールなどで出ています。症状はエボラ出血熱に似ており、大量出血と多臓器不全で、死亡率25%程度といわれています。


鳥インフルエンザ

 正しくは高病原性鳥型インフルエンザと言います。インフルエンザは、主にA型とB型が流行しますが、新型が出てくるのはA型で、鳥インフルエンザもA型に属します。新型のインフルエンザが流行ると、ほとんどの人が新型インフルエンザに免疫抗体を持っていないので、感染し発病します。この新型の病原性が高いと(毒性が強い)、多数の死亡者が出ます。1919年のスペイン風邪では世界中で、2500万人、日本で50万人の死者が出ました。アジア風邪、香港風邪の流行では、150万人が死亡しています。高病原性のウイルスでも、ある程度広まり、人々が免疫力を持つようになると、その後流行しても、余り犠牲者は出なくなります。例えば、近年ちまたで流行しているインフルエンザなども、スペイン風邪ウイルスの子孫である、ソ連風邪が少し変化したものです。
 さて、インフルエンザウイルスはその表面にある凝血素(HA、ウイルスが細胞に入り込む時、くっつく部位)とノイラミナーゼ(NA)という物質のタイプで様々な亜型に分類されています。HAはH1〜H5、

NAはN1〜N9です。そして、この組み合わせでH1N1、H5N1などと呼ばれています。ちなみに前者は近年流行りのインフルエンザウイルスです。そして後者は鳥インフルエンザです。
 インフルエンザの毒性は細胞への感染に関与するHAのアミノ酸の並び方に関係しています。喉や鼻、胃腸の粘膜細胞にのみ存在するタンパク分解酵素でHAが感染型に変化するウイルスは、気道や胃腸にだけ感染するので、普通のインフルエンザの症状を起こします。ところが病原性の高いウイルスは全身の細胞の多くが持っているタンパク分解酵素でHAが感染する形になります。このため全身の細胞にウイルスが感染し、極めて重い全身症状が出て、命を脅かします。
 次に鳥インフルエンザに対する対策ですが、今までのワクチン作成と同様に鶏卵を使うと、ウイルスの毒が鶏卵自体を殺してしまいワクチンを作ることができません。このため、ウイルスを弱毒化したり、培養細

(4 ページに続く)

新興感染症とは | ウエストナイル熱とニパウイルス
エボラ出血熱とラッサ熱| 鳥インフルエンザ| 牛海綿状脳症(BSE,狂牛病)