鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活6巻10号

すこやか生活

脳の老化とぼけ

 老化は生のあるものすべてに起こります。誕生、成長、老化、そして死へと個体が変化していく過程の中で避けることはできません。老化の結果、様々な体の機能が衰えあ脳の機能も低下します。そのうち脳の機能(主に知能)が著明に低下することをぼけ(痴呆)と言います。人の細胞の核内にあるDNAには老化のプログラムが組み込まれており、細胞が生まれてある一定の時間が経つと、時限爆弾的にそのプログラムが働きだし、細胞が衰えて死滅していきます。また、経年変化として細胞毒性を持つ活性酸素がたくさん作られ、その結果細胞が壊れることも知られています。これらの原因のどれが老化のメカニズムの中心的なものか解明されていませんが、いくつかの原因が重なり合って老化が進むと考えられています。
 人間は約1000億個の神経細胞を持って生まれてきます。これらの細胞がシナプスと呼ばれる神経繊維のネットワークでつながります。このシナプスの増量によって、脳の重さは二十歳頃には出生時の約3倍になります。しかし、

二十歳を過ぎると脳細胞の死滅が始まり、脳の重さは一年に1gの割合で軽くなります。この脳細胞重量の減少は、神経細胞が1日あたり10万個ずつ生涯にわたって減り続けるからです。なお、アルコール依存者や大量飲酒者はこれに加え一日6万個ずつ余計に脳細胞を失っていきます。アルコール以外には、病気、運動不足、学習不足、脳の刺激不足、うつ病などによってよりいっそう脳細胞の減少が加速されると考えられています。
 さて、正常な人でも脳の老化は起こります。物忘れをしやすくなったりするのがこれです。また、物事を理解し判断する能力も遅くなるため、結果的に反応時間が長くなります。いわゆる頭が鈍くなるという現象です。これはネットワークが徐々に断線してゆくからです。そして、ある一定以上の老化を超えると一般に"ぼけ"と言われます。"ぼけ"は、通常の速度を超えた病的な脳の老化と言い換えることができます。その簡単な違いを表にまとめました。






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