おしっこを漏らすことは、人にとってとても屈辱的な事なので、なかなか口に出しにくいのですが、時々相談を受けることがあります。人知れず悩んでいる方は多いのかもしれません。女性に多い腹圧性尿失禁と、男性の前立腺肥大に合併する溢流(いつりゅう)性尿失禁が代表で、神経の病気や、痴呆に併発するものもあります

1)腹圧性尿失禁--女性に多い尿失禁
 咳やくしゃみ、しゃがんだりするなどの体位によって腹圧が高まり尿が漏れることです。もっと簡単にいうとお腹が不意に圧迫された拍子におしっこが出てしまうことです。これは、膀胱の蛇口である膀胱括約筋がゆるんでしまったり、その働きを助ける骨盤底筋群がたるんでしまったことが原因です。これらは女性、特に多産や自然分娩で難産をした方に多いことが知られています。これらの方々が中高齢になると、筋肉が徐々にくたびれゆるんできます。また、女性ホルモンも不足してくるので、蛇口のパッキン(尿道の粘膜)が細り漏れやすい条件がそろいます。この年齢になると太る方が多くなり、ますます腹圧があがって、ちょっとした腹圧の増加によって漏れてしまいます。
 治療は尿道括約筋を収縮して蛇口を絞るスピロペント(喘息でつかうβ刺激剤)や膀胱の緊張をゆるめ腹圧を逃がすバップフォーなどがよく使われます。また、
骨盤底筋群を強くする体操(次ページ)も有効と言われていますので、是非やってみてください。15分くらいずつを毎日3回程度、3ヶ月続けると効果があると言われています。食後テレビを見ながらやっても良いし、寝る前にやるのもよいでしょう。時間のない方は、歯磨きをしながらや通勤電車の中でも体操は可能です。尿漏れに悩む方は、是非実行して下さい。

2)溢流(いつりゅう)性尿失禁--男性に多い尿失禁  
 
前立腺肥大などで尿が膀胱に思い切り溜まって、その水圧でダムがあふれるように出てくる尿失禁です。これは、膀胱自体の問題ではありませんので、尿の出口(尿道)を塞ぐ原因を調べ、それに見合った解決策をとります。

3)切迫性尿失禁
 尿を漏らさずに保持するためには、膀胱(膀胱排尿筋)がゆるみ、尿道括約筋が締まらなくてはなりません。前者の膀胱がゆるんで広がって尿を溜める機能は傷害されやすく、ちょっと尿が溜まっても出てしまうことを切迫性尿失禁と呼びます。不安定膀胱とも呼ばれ、いつもおしっこがしたく漏れそうな感じになります。膀胱炎などによっても同様なことが起こります。バップフォーやポラキスなど膀胱の過度の緊張をゆるめる薬が有効です。 

4)機能性尿失禁
 おしっこがしたいと感じると、トイレに行き、下着を下げて準備し排尿します。そして最後に後始末をして衣服を整える。この一連の作業が滞ってしまい失敗することを機能性尿失禁と呼びます。代表的な原因は。アルツハイマーや老化による痴呆です。これらは原因が原因なので治療が難しく、オムツになってしまうことが多いようです。






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