鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活第21巻11号

新型コロナウイルス性肺炎

 一般によく見られる肺炎は、細菌性なら肺炎球菌やインフルエンザ菌、それ以外ならマイコプラズマなどが一般的です。高齢者の誤嚥性肺炎は重症になることもあり入院することが普通ですが、高齢者ではない成人の肺炎は外来で治療することも少なくありません。
 さて、今回議論になっている軽症、中等症、重症が話題になっていますが、実はきちんとした基準はありません。ただ、行政の取り扱いによると、
@無症候者:熱やセキなど肺炎症状なし
A軽症者:酸素無しで済み、自宅や施設で
B中等症者:酸素吸入が必要で入院を要す
C重症者:ICU(集中治療室)に入り、人工呼吸器ECMOが必要
 こんな感じです。つまり、
39℃であっても、セキがひどくても、酸素を吸うレベルでなければ軽症者に区分されます。この基準では外来で治療できる肺炎球菌やマイコプラズマ肺炎のほとんどが、軽症者に区分されるレベルになります。酸素を吸わなければならない患者さんが多い新型コロナウイルス性肺炎は、いかに強烈かということです。
 一般の肺炎は、気管支に吸い込んだ後鼻漏や痰が気管支につまってその先(末梢)に肺炎を起こします。このため、気管支の分枝に沿って、肺葉や肺区画ごとに限定して肺炎を起こします。つまり、木の一本の枝の先だけの肺炎なので部分

的に落葉した木のイメージです。部分的な肺炎なら残りの正常な部分で呼吸機能を補うことができます。ところが新型コロナの肺炎は、木のあちこちの枝に肺炎を起こすため、多くの枝で葉っぱが落ちてしまうので、枯れ木となってしまうのです。(中等症〜)
 また、広い範囲で肺がやられるのに伴い、炎症性物質の影響で全身の血管内で凝固(血が固まる)が起こったり、全身の臓器がやられ、いわゆる多臓器不全になったのが重症です。
 @、Aの無症候者や軽症者も
CTで両側に肺炎が出ていることがあり、発症後7日程度はB以上に進むことがあるので油断ができません。@、Aの多くはその後自然に治り、B、Cも酸素や呼吸器で呼吸のアシストを行いながら、治ってくるのを待ちます。この経過が速くて14日、長いとその倍になり、一度入院するとなかなか病院のベッドが空きません。特に重症になると回復に時間がかかります。
 現在、様々な薬の治療の研究が始まっていますが、現時点では決定打はありません。早期にアビガンを使うと効いているようですので、
発症したらすぐに発見し、治療につなげれば、重症化するケースは減るでしょう。これにはPCR検査を増やすことが必須です。レムデシビルやオルベスコなどの研究結果もこれから次々出てくるので目が離せません。

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