便は食物線維など消化吸収できなかった食べ物の残り、胃腸の粘膜からの分泌物、粘膜上皮が新陳代謝で剥がれ落ちたもの(皮膚で言えばアカのようなもの)、胆汁や膵液などの消化液が混ざってできています。この便が、腸の蠕動運動で押し出され、概ね前日に食べた食事のカスが、一日後に出てくるイメージです。下痢はこの過程のどこかに問題があって、水分の多い便が出ることです。
浸透圧性下痢
 腸管内に吸収しにくい分子(物質)が入り、それが腸管内の水分を引きつけて水分の多い便として出てくるものです。乳糖が分解できない乳糖不耐症、オリゴ糖の取りすぎ、酸化マグネシウムのような塩類下剤の超過、膵炎で食物の消化ができず、食物そのものが非吸収分子になっている場合などです。
滲出性下痢
 腸の炎症により、腸管粘膜の水分保持力が低下し、多量の水分や
NaKなどの塩分がしみ出てくる場合です。もっとも多いタイプの下痢で、ノロウイルスなどのウイルス性の大腸炎、サルモネラ、カンピロバクターなどの細菌感染による腸の炎症、他、潰瘍性大腸炎やクローン病、腸結核、放射線腸炎などがこれに含まれます。
分泌性下痢
 消化管粘膜の分泌が異常に増えて、水などが腸へ出ていくタイプの下痢です。原因は、ブドウ球菌食中毒、コレラ、腸管出血性大腸菌(
O-157など)、赤痢などの毒素を出す微生物な

どが中心です。ごくごくまれに、腸の分泌を激増させるホルモンを分泌する腫瘍が原因のこともあります。
腸管の運動異常
 腸が動きすぎて水分を吸収する間もなく食べ物が出てきて下痢が起こります。ストレスで交感神経が興奮しすぎ、それを回避するために副交感神経が過剰に反応し、腸管が動きすぎる過敏性腸症候群(
IBS)や、似たような機序で腸蠕動が増す、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)がよく見られます。抗生物質のクラリスで起こる下痢もここに入ります。
 逆に、糖尿病による副交感神経障害や強皮症による腸蠕動の低下で、腸内細菌の異常増殖が起こり、脂肪や水分の吸収障害をきたし下痢になることもあります。
下痢止めは使うべきか?
 感染性の下痢の場合、体に悪い病原体や毒素が下痢によって出ていった方がよいので、腸管運動を止める下痢止めは使いません。この場合は主に、点滴やスポーツドリンクで水分や塩分を補うことに治療の主眼をおきます。下痢をするから食事や水を摂らない方がいますが、経口摂取してすぐ出る下痢は、直腸に出るべくして溜まっているものなので気にしないで摂取してください。腸の過剰運動による下痢は、イリボーやロペラミド、ブスコパンなど、蠕動運動を抑える薬(下痢止めなど)が有効です。クラリスで下痢する場合も同様です。

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