がなく、着実に前に進みます。リンパは進みながら要所要所にあるリンパ節というフィルターを通り浄化されてから静脈へ注ぎます。リンパは脂肪との相性がよく、小腸で吸収された中性脂肪は毛細血管に入るのではなく、リンパ管へ入ります。水との親和性が高く血管へと入る糖やタンパク質と異なるところです。このため、胸管という体の中心を通るリンパ管が破れると、お腹や胸に油の浮いた腹水や胸水があふれます。

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移)が全身に広がらないよう、とりあえずそこでくい止めた結果です。
 リンパ管や静脈は動脈と異なり、心臓のポンプ機能の影響を直接受けることはありません。その代わり、壁が薄いため、まわりの筋肉に押されたり、絞られたり、壁自身がわずかに収縮することによって内容液が押し出されます。また、逆流防止弁が並んだ構造をしているため、わずかにでも進んだ液は逆戻りすること






2つのむくみ

 足がむくむ場合、水が皮下に溜まってむくむものと、タンパク質などの水以外の物質も溜まっておこるむくみがあります。前者は水ぶくれのようなものなので、指で押すとへこんですぐには元に戻りません(圧痕を残す)。後者は水より可動性の少ない物質が溜まるので、押したときのへこみが軽度で、すぐ元通りになります(圧痕を残さない)。
1)圧痕を残すむくみ
 水だけがだぶつく原因でおこるむくみです。心不全で血液を送り出す力が無く、静脈や毛細血管の圧が上がり、毛細血管から水がしみ出てくる場合、ネフローゼや肝硬変などで血管内のタンパク質濃度が低下して、毛細血管内に水を保つことができずしみ出てくる場合などが典型例です。貧血で、低タンパクや酸素欠乏に陥ったり、心不全を誘発しておこるむくみも同様です。
 これらは全て、原因疾患の治療によってむくみを解消することも可能ですが、原因治療があまり有効でない場合は、フロセミドなどの利尿剤で水分や塩分を体から出していく方針でよいでしょう。塩分制限も有効です。

2)圧痕を残さないむくみ
 皮下の部分に水に加えて、タンパク質や細胞成分も溜まると、ちょっとやそっと押したくらいではあとが残るようなむくみではすみません。仮に一瞬へこんでも、弾力性のある貯留物の反発力ですぐに元に戻ってしまいます。
 原因は、甲状腺機能低下症(橋本病など)、リンパ性浮腫などがあります。甲状腺機能低下がおこると、体内の物質代謝が変わり、糖タンパクが皮下にたまります。リンパ性浮腫は、手術やガン等によって図のリンパ管の圧迫、途絶がおこり、リンパ液が静脈に戻らなくなったものです。リンパは水以外の多くの物質を含むため、それらが皮下に蓄積します。
 甲状腺機能低下はホルモンバランスを正常化させれば元通りになります。リンパ性浮腫は原因によって、リンパの流れを復旧させることも可能ですが、あまり有効な治療法が無い場合が一般的です。マッサージや弾性ストッキングのようなもので圧迫し、リンパの脇道が少しでも広がるような工夫が有効なこともありますが、抜本的な解決にはならないようです。

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