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認知症の背景

 以前は"ぼけ"と呼ばれていた高齢者の脳機能低下に伴う様々な症状の総称は、老人性痴呆、アルツハイマー病、認知症と名前の変遷をとげました。恍惚の人という小説もあり、昔の名前や状況、表現は妙に臨場感があふれていました。現在の認知症というネーミングは、あたりは柔らかいもののイメージがわきにくく、大変残念です。
 さて、この認知症は高齢化社会の急速な進行により、1999年〜2005年の間に診断された患者数が6倍、医療費が3倍になりました。また、介護費も医療費とは別にその3倍〜5倍(2000年度で2.3兆円)かかっています。経済的な社会負担だけでなく、施設や家庭での介護に人手もかかり、労働損失も含め大きな問題になっています。もし、認知症になるのを少しでも防ぐことができれば、この社会問題も少しは緩和できます。また、高齢になっても頭がすっきりしていれば、運動や日常生活の自立など身体的な面ばかりでなく、旅行や映画・音楽鑑賞、読書など文化的にも生活の質がアップするはず

です。
 認知症に関する研究は進み、以前は脳細胞は一度死ぬと再生しないと考えられていましたが、現在は少しずつ新たに作られていることがわかってきました。加齢現象などによる脳細胞数の減少が、新たにできる脳細胞数を上回ると、脳の機能が低下してきます。脳細胞の再生を助け、破壊を防げば総細胞数を維持でき、認知症も回避可能です。ただ、脳細胞の減少は30代にはもう始まります。このため認知症の予防はできるだけ早い年齢から計画的に行わなければなりません。その上、脳細胞を保つために有効と言われている手段が、20年先、30年先に本当に効果が出るかも保証できません。
 以上、認知症は個人的にも社会的にも大変大きな問題なうえ、まだまだその対策に決め手がないのも事実です。今回は今までにわかっている知見を紹介し、少しでも皆さんの脳が若く保てるよう生活を変えていただければと思っています。






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