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微生物の分類と抗生物質

 抗生物質、抗生剤という言葉が医療の場ではよく出てきます。この"生きる"のに、"抗する"という字そのままに、この物質はある生物が生きるのを阻みます。その生き物とは一般に細菌です。微生物は、小さい方から、ウイルス、リケッチア
、クラミジア、細菌、真菌(カビ)、そして原虫に分けられます。ウイルスは、電子顕微鏡レベル、細菌は顕微鏡レベル、そして真菌や原虫は高倍率の虫眼鏡レベルで見ることができます。
 細菌より大きい微生物は寒天や食品など栄養のある物質の上で繁殖することが可能です。それより小さい微生物は、概ね細胞の中に入って繁殖します。ウイルスなどの微生物は細胞の外に出てしまうと長く生きていくことができないのです。
 さて、口や腸の中、皮膚の表面など普段は細胞の外でおとなしく暮らしている細菌も時には大暴れします。肺炎や、膀胱炎、傷口の化膿などです。これらの病気の時に体を傷めず、細菌だけ殺す薬が抗生物質です。正しくは殺すと言うより、1つが2つ、2つが4つと分裂増殖するサイクルに挟まって、増殖するのを止め、細菌の勢いをそぐ作用が中心です。
 細菌を退治する薬として最初出てきたのが、ヒ素系

の物質など文字通り細菌を殺しにいく物質でした。これは非常に強い殺菌作用があるので、当然人体も返り血を浴びます。また、現在でも使われることのあるサルファ剤が次に作られました。続いて、細菌を生やすための寒天上に偶然混じって生えた青カビの周りには細菌が生えないことが発見されました。1929年のことで、抗生物質の代表作となるペニシリン発見のエピソードです。ペニシリウムというカビが自分を守るために作り出し、周囲に分泌した細菌よけの物質です。カビ自身に毒が及んではいけないので、殺菌作用の強い毒物と比べ、人に対してもほとんど害はありません。戦後、結核治療薬の中心となるストレプトマイシンが放線菌の一種 から発見され、タンパク質合成を阻害することにより結核菌などのバクテリアの成長や代謝を停止させる抗生物質として実用化され、抗生物質が医薬品の花形になる時代が幕を開けました。以後、昭和が終わる頃までは薬の開発といえば抗生物質でした。近頃は細菌対策が一段落し、あまり新薬が出てこなくなったかわりに、今までほとんど実用化されていなかった抗ウイルス剤が次々と発売されています。






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