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ピロリ菌(Helicobacter Pylori)

 1983年に発見されて以来、上部消化管(食道、胃、十二指腸)の病気の景色を塗り替えたほど、胃に大きな影響を及ぼしていた細菌です。その発見者は利根川さんのような基礎医学研究者ではなく、一般臨床医に近い人にも拘わらず、ノーベル賞を受賞し、人類の福祉に多大な貢献をしたことが認められました。ピロリ菌は、胃酸のため今まで微生物は住めないと言われていた胃に住み着いている細菌です。そしてこの菌は、様々な病気に関与しており、菌を取り除くことができれば、いままでなかなか治らなかった病気が治る可能性あり、見違えるほど病気の景色を変えました。現時点では、胃、十二指腸潰瘍と診断された方のみで、ピロリ菌の検査や除菌治療が健康保険で認められています。しかし、潰瘍以外にも様々な病気に関与し

ている可能性が濃厚であるため、今後は病気によっては保険による除菌治療が拡大される可能性があります。以下は、その簡単なまとめです。

@胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発が減る
A慢性胃炎の改善
 →胃ガン予防になる可能性がある
  (特に若い人)
B胃の過形成ポリープが消失する可能性
(胃ポリープの大部分)
C胃原発の悪性リンパ腫(MALT)が
  寛解する(落ち着く)
D特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
  が治る

などです。今回はピロリ菌を含め、上部消化管の最近の話題を取り上げます。






胃潰瘍治療のガイドライン

 ピロリ菌の知見がそろってから、景色が最も変わった病気が胃、十二指腸潰瘍です。過度の胃酸分泌が潰瘍の発生や再発に重要であることは変わりませんが、粘膜防御機構を増強して胃潰瘍の治療をしていくというもう一つの潰瘍治療の柱が一部を除いて崩れ去りました。また、潰瘍増悪因子における食事、ストレス、喫煙の重要度も低下しました。
 現在では、
胃潰瘍の主な原因はピロリ菌と、NSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛解熱剤(頭痛や腰痛の薬で、バファリン、イブ、ロキソニンなどが代表。)であり、ピロリ菌が関係する潰瘍は、除菌できると再発率が

激減します。胃潰瘍の原因がよくわからず、その治療も試行錯誤で皆が右往左往していた時代から見ると、非常にスッキリしてきて以下のフローチャートのような方針が立てられるようになったのです。もちろん、このフローチャートから漏れる人もたくさんいますし、除菌がうまくいかないこともあります。潰瘍は以前、"慢性消化性潰瘍"などとも言われ、治らない病気の代表でした。しかし現在ではフローチャートに乗って治療を進めれば治ってしまう可能性が高くなりました。
 下図をご覧下さい。胃潰瘍と診断された時、まずは

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ピロリ菌 胃潰瘍治療のガイドライン | ピロリ菌除菌治療の実際
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豊かさと逆流性食道炎(GERD) | 内視鏡治療の進歩