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鎌倉市大船 山口内科 すこやか生活第3巻9号

痛みの3つの側面

前ページで典型的な体の痛みの仕組みを示しました。けがや盲腸など急性期の痛みは皆これに当てはまります。しかし最近では、慢性頭痛、慢性の腰痛、その他単純な図式で説明しきれない痛みが増えています。その理由は、痛みに次の3つの側面があるからです。

 
1)体の側面
 手術やけが、炎症やガンなど実際の痛みを引き起こす体の変化や、それに対する体の防御反応です。痛みに対して筋肉を緊張させ、体をこわばらせるのはその場所を守るため。痛みの部位周辺の血管が収縮するのは、その部位からの出血を最小限にくい止めるため。また、血圧が上がるのも、出血による血圧低下に対抗するための防御反応です。大切な反応も行き過ぎてしまうと悪循環に陥ります。

2)心の側面
 不快、不安、恐れ、緊張、うつ状態、怒り、不満など、様々な心の変化を引き起こします。

3)社会的側面
 痛みによる不眠やストレス、家庭や社会での状況が痛みを修飾します。また、経済的な問題や交通事故後の補償問題など、より複雑な社会的側面も痛みをいっそう解決困難にします。
 痛みの感覚は主観的なものです。しかし、その痛みを周囲の人に知らせようとする表現様式(痛みの行動)はある程度客観的です。痛みが辛く病院へ行く、家族に毎日こぼすなどです。この行動によって家族や我々は痛みを間接的に理解します。現在までこの主観的な痛みを客観的に評価する方法はなく、痛みを感じている人も、それを周囲で見ている人も歯がゆい思いをしています。体だけでなく、心や社会的側面を視野に入れて痛みを考えていくことが、痛みを理解するポイントになるのでしょう。


かゆみとしびれ

 ジンマシンができたり蚊に刺されるとかゆみが出ます。もちろん局所の炎症による刺激が原因ですが、痛みに比べると軽い刺激が痛みの神経によってかゆみとして拾われ認識されます。従って痛みが良くなってくるとともにかゆみが出てくるのは、痛みの原因が改善し、良くなってきている証拠なのです。また、かゆかったところが痛くなってきた場合、それは悪化したことになります。ピリピリした感じなどは、かゆみと

痛みの中間に当たる感覚を言葉に表現したものと言えましょうか。かゆみの治療に有効な抗ヒスタミン剤などは、かゆみを起こす物質の影響を軽減するだけではなく、神経の感覚をぼかす働きがあり痛みやかゆみを軽減します。眠気の原因になりますが。
 手がしびれた、足先がしびれたという話をよく聞きます。しびれとは主に末梢神経の不快感です。痛みやかゆみと違って、神経の末端に刺激が加わったのでは

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