体液の組成

 体の中の水分を総じて体液と呼びます。この体液は、前述の通り、細胞外液(血漿と間質液)と細胞内液に峻別されます。それは、細胞の内外では全く環境が異なり、それに見合った全く異なった組成でできているからです。水に溶けている成分は、ほとんどが電気的にプラスかマイナスの電化を持って電離し、各々陽イオン、陰イオンと呼ばれます。それでは各々の組成をグラフで見てみましょう。これらの水以外の物質の粒子は、濃度が濃いと水を保持する力を持ち、これを浸透圧と呼びます。
細胞外液:左側の4本の棒グラフで、左二つが血漿、右二つが間質液です。この2種の細胞外液は、色分けのようにほぼ類似しています。大きな特徴は、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩素イオン)が大部分を占めます。Na+が圧倒的に多いためバランスをとるためにCl-のほかHCO3-やタンパク質が陰イオンとして含まれます。また、K+(カリウムイオン)は、ほんの少ししか含まれません。
 ここで、
Na+Cl-は塩化ナトリウム(NaCl:食塩)が水に溶けて電離した物です。つまり細胞外液の主成分は水と塩という訳です。NaClの電離した、Na+Cl-は水の中の粒子として、浸透圧を維持する働きを行います。浸透圧

とは、水分に含まれる粒子の総量で決まる、水を出し入れする力です。2つの異なった浸透圧の液体が粒子を通さず水だけ通す膜の両側にあったとします。すると、浸透圧の低い、つまり水の割合が多い方から浸透圧の高い方へ水だけが移動し、最終的に両者の浸透圧(≒塩分濃度)は等しくなります。また、尿や汗として、水分が体外へ出るときも同時にNaClも出るなど、水と塩分は切っても切り離せない関係にあるのです。
 細胞外液が多量に失われる細胞外脱水の場合は、上記の理由で細胞外液に近い組成の生理食塩水(食塩
0.9重量%Na+154mEq/l, Cl-154mEq/l)や、それに類似した成分の点滴をします。
細胞内液:細胞外液と全く異なった組成をしており、目立つのは陽イオンとしてK+が、陰イオンとしてPO4-とタンパク質が多いことです。K+は主に筋肉や神経細胞の収縮、興奮、伝達などの働きに関与しています。なお、K+のほとんどは細胞内にあるため、細胞外液である血液検査からは、細胞内のK+がどのくらいあるのか確認することはできません。幸い細胞がこわれない限り、K+は体内から出ないので、一日あたりの必要な摂取量は、Na+より少なくて済みます。

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