すこやか生活

食物摂取と嚥下

 人は食べ物を目で見て臭いをかぎわけ、美味しそうかどうか、腐っていないかどうかなどを確認し、口へ入れます。寝ころんだままでは飲み込みにくいので、概ね座った姿勢で、手を使って食べ物を口に運びます。口に入った食べ物は舌で味を確かめ味わってから、歯やアゴの筋肉を使ってかみ砕き、唾液を混ぜて消化を助け、飲み込みやすい半固形物とします。ここまでを口腔準備期と呼びます。次に食物塊を口からノドの奥(咽頭)へ送ります。ここが口腔期で食べ物がここまで来ると無意識や意識的に次の嚥下(飲み込み)動作に入ります。
 
嚥下期(図2)はノドの食物が鼻に逆流しないように軟口蓋が上に持ち上がって鼻咽腔が閉鎖し①、次にノドから口へ逆流しないように舌の奥が持ち上がってノドと口腔を遮断します②。その後、喉頭の筋肉の働きで喉頭が挙上し③、喉頭蓋(気管のフタ)が後ろへ折れ曲がって、気管に食物が入り込まないよう(誤嚥しないように)声帯の上をフタします④。同時に声帯が閉じ、二重に逆流防止

機構が働きます⑤。次に咽頭の筋肉の収縮と舌根の後方運動で、咽頭内の内圧が高まり、食物を下へ押し出します⑥。同時に、食道への入り口が広がり⑦、食物を食道へ押し込みます。いったん食物が食道へ入ると食道の入り口を輪状咽頭筋の収縮で入り口を閉じ、逆流を防ぎます。これらの一連の運動は、ゴクンと飲み込もうという口腔期の動作に引き続き咽頭、喉頭の反射(自動的な運動)として起こり、一度始まったら一連の動作が終了するまで止めることはできません。
 食道へ送られた食物は、食道の蠕動運動で胃へ送られ、いったん胃内に入ると噴門の括約筋の働きで、食道下端が閉じ、胃からも逆流しないようになっています。
 このように、嚥下を行う口とノドは鼻から気管へ空気を吸うルートと交叉するため(図1)、呼吸と嚥下を上手に振り分ける巧妙な機能が備わっています。この振り分けが少しでも働かないと、食物を上手に飲み込めなかったり誤嚥が起こり、肺炎になってしまいます。






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