細胞外液・内液の電解質

 皆さんよくご存じの生理食塩水は、0.9%の食塩(NaCl)を含んだ水です。これはおよそ、300mosmの浸透圧を持つ、血液や間質液などの細胞外液と等張(同じ浸透圧)です。この浸透圧を作っているのはナトリウムイオン(Na+)や塩素イオン(Cl-)です。グラフの数字は、主なイオンなどの水1リットルあたりに含まれる量で、陽イオンと陰イオンを作る粒子の量を合算したものが300mosmという浸透圧になります。(グラフのmEqとmosmとはここでは同等です。)
 グラフでおわかりのように、血液などの細胞外液の陽イオンは、Na+が主成分で、K+、Ca+、Mg+が少しずつ含まれています。これに対し陰イオンはCl-が主成分で、HCO3-、タンパク質、リン酸などが含まれます。つまり、食塩(NaCl)が主な成分なので、生理食塩水という血液と浸透圧(濃度)の等しい食塩水で、ある程度代用可能なのです。
 ところが、細胞の中を見てみると、陽イオンはK+が中心で、細胞外の陽イオンのほとんどを占めるNa+は少数派になります。同じく、陰イオンも、リン酸とタンパク質がほとんどで、はCl-ほとんどありません。このように、細胞の内外のイオンの組成は全く異なってお

り、細胞膜が組成の大きな違いを維持しています。なお、この組成の割合が少しでも狂うと、心臓が止まってしまうなど危険な状況に陥ることがあります。
 さて、汗をかくと塩を吹きます。これは、細胞外液から水分が蒸散するので、その主成分のNaとClが同時に出るためしょっぱい塩(NaCl)が吹きます。このため、汗をかく運動や作業をする場合は、水だけでなく、塩(NaCl)も摂取しないと塩分が不足するので、ポカリスエットのようなイオン水を飲むことが合理的です。
 腎臓で作られる尿は、汗のように単純ではありません。それは、腎臓は尿素窒素などの老廃物を体外へ排出することに加え、体内の水分、塩分を血管から出したあと再吸収し、細胞外液の成分の濃度が一定で変わらないように調節しています。このため、水が多く塩分が少なければ塩分の薄い尿を、その逆なら塩分の多い尿を作ります。したがって、腎臓の働きが十分であれば、多少無理をかけても体の塩分バランスは維持されます。ところが、高齢になったり糖尿病その他で腎臓の働きが落ちてくると、この自動調節機構が働かず、無理は体に響いてきます。腎臓の悪い方が塩分制限をしたりカリウム(K)制限をするのは、こういった理由です。
 なお、細胞がカリウム(K)を多く含むのは、動物(人)も植物も同じです。このため、生野菜や果物を多く食べるとカリウムをたくさん摂取することになります。逆に、ゆでたり煮たりして、野菜の細胞膜を壊し、煮汁にカリウムを逃がしてやるとカリウムの低い食事ができあがります。ただし、ビタミンCなどの水溶性ビタミンも逃げてしまうので、いたしかゆしですが。






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