規則正しく薬を飲む理由

 一口で薬と言っても効く理由は様々です。一般に内服薬は定期的に服用する物がほとんどです。ところが症状がなかったり、ちょっと良くなったからといって、止めたり間引く方がいます。痛み止めや、下剤など、内服の目的が達成できたら止めて良いものもありますが、ほとんどの薬は止めて良いかどうかの判断が付きにくい物ばかりです。まずは、薬の効き方を知って、どうして規則正しく飲まなければならないのか理解しましょう。
血中濃度を維持すべき薬
 高血圧の薬が代表です。ある一定の血中濃度の時、どの程度血圧が下がるかわかっている薬は、その血中濃度を維持すると、目標の血圧が維持できます。血中濃度の維持をモデルケースで見ますと(図2)、1日2度内服し、徐々に血中濃度が上がってきて、ある一定の日数で、定

常状態(平らそれ以上増えていかない状態)に達します。青の点線より上が有効域だとすると、定常状態は薬が効いている状態です。ところが一度有効域に到達しても、薬の飲み忘れや、跳ばしてしまうと(図3)、平均血中濃度のカーブがお辞儀をし、有効血中濃度のラインを下廻ります。アムロジビンなどの高血圧治療薬、ジゴキシンやピルシカイニド、リドカインなどの抗不整脈剤、アトルバスタチンなどの高コレステロール血症治療薬、花粉症などアレルギーの薬、その他、多くの慢性疾患治療の薬のほとんどがこのタイプに属します。これらは、計画的に使う薬なので、適当に間引くと効果が期待できなかったり、思いつきで1錠加えても意味がありません。従って、計画通りきちんと服用することが肝要です。






一定の間隔で、高い血中濃度が必要な薬
 抗生物質や一部の抗ガン剤など、微生物やガン細胞の増殖サイクルに合わせて高い濃度が必要な薬です。これらには2つのタイプがあります。(図4①、②)
①細菌などが増殖するのを阻止することができる血中濃度(MIC)を維持している時間の長さが重要な薬剤
②最高血中濃度が高ければ高いほど良く、その持続時間に左右されない薬剤
①のタイプは、ペニシリンやセフェム系の抗生物質です。フロモックスやメイアクトなどが該当します。これらは、一日3回服用することで、MICを越える血中濃度を一日のうち一定時間、維持することができます。このタイプの薬を、2錠を1錠に減らして飲んだり、1日3回のところ、1~2回しか服用しないと十分な血中濃度

の持続時間を確保することができず、服用する意味がなくなります。
②のタイプはニューキノロンと呼ばれる抗菌剤が代表です。こちらは図4②のとおり、ピークが高ければ高いほど有効です。以前は①と同様、一日3回服用するのが一般的でしたが、3回分まとめて服

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図4

②最高血中濃度がたとえ短くとも高ければいい薬

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