セキを止めてもいいのか?

 「セキが止まらない。」という症状が悩みで来院される方がよくいます。そんな方はたいがい、「セキが止まる薬を下さい。」と訴えます。そこで「セキを止める薬はあまり効きませんよ。」とか、「セキを止める薬を使うとかえって治らなかったり、病気を悪化させますよ。」と、言うと怪訝な顔をされます。今回は、セキを止めてよいのか?セキは果たして体によいのか悪いのかなどを、考えてみましょう。
 セキとは、気道内部の異物を、吐く息の強い力ではき出す、体を守る大切な防御反応です。異物ははき出されないと、気道の奥にとどまって炎症を起こし、肺炎に進みます。このように体の自然な反応を、無理に止めると、病気から体を守れなくなります。また、セキは、ぜんそくで気管支が狭くなったり、肺気腫で膨らんだ肺に気管支が押しつぶされたとき、はく息の勢いで狭い場所を押し広げる働きもあります。この場合もセキを止めると息がしづらくなってしまいます。

 以上のように、大切な働きのあるセキですが、一晩中出てしまうと眠ることもできず、体が消耗します。また、強いセキの勢いで肋骨を折ったり、気胸になる場合もあります。こうなっては、「セキは体に良いものなので止めてはいけません。」などと、言っていられません。そこで、リン酸コデインなどのセキ止めを使うことがあります。これは、セキをする呼吸筋を操る神経を麻痺させて、セキの動作を止める薬です。神経を麻痺させるのでセキ自体は止まる可能性がありますが、セキの原因は何ら解決されていません。それどころか、大切なセキの働きを阻害し合併症を誘発する可能性があり、使い方が難しい薬です。
 そこで、セキが出たときの王道は、根本原因を突き止めて、セキを元から絶つことです。
セキは、ごく希なやむを得ない時を除き、無理矢理止めるのでなく根本治療を行って止めていくのが良いと覚えておきしょう。






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