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高齢者の心・肺機能

 この数ヶ月の間に、普段元気にしてこられた高齢者の方が数名、息切れや咳など心不全や呼吸不全になりました。どなたも後期高齢者と呼ばれる75歳を過ぎた方ばかりです。
 これらの方々は、心臓弁膜症や心房細動などの不整脈、肋膜炎(結核)の後遺症やタバコによる肺気腫など、元々心臓や肺に問題を抱えていました。弁膜症は子どもの頃から、肋膜は20代の頃から、そして心房細動や肺気腫は60代から引きずってきたものです。
 人の体はこのような病気があっても何とか持ちこたえられるよう余裕をもって作られています。人生50年、60年の時代では、この余裕が生きて、心臓や肺は何とか最後まで大事に至らずに持ちこたえていました。ところが、平均寿命が延び、後期高齢者に達する方が増えるに従って、余裕を使い切り、長年煩った病気が原因で心不全、呼吸不全を起こす方が増えました。
 心臓と肺は肺動脈・肺静脈を介して連結されています。高齢になるにつれ、連結回路のあちこちに劣化が起こり、積もり積もって余

裕の域を食いつぶし、心・肺機能の低下がおきてしまいます。
 心臓では、長年の過労で心筋がくたびれ果て、大動脈や心臓の弁の動脈硬化による狭窄(血液の通過障害)や閉鎖不全(血液の行き戻り)も出てきます。
 肺は、間質の線維化で硬くなり、ガス交換(酸素と二酸化炭素の入れ替え)が十分できなくなります。肺胞の破壊も呼吸不全の原因となります。横隔膜(呼吸をする筋肉)がくたびれたり筋力が低下すると、息が十分吸えなくなります。
 このように、元々の病気に体の衰えが重なり、心不全、呼吸不全になっていく高齢者が増えてきました。治るべき一部の病気が克服されても、治らない病気や後遺症に老化が重なる内臓機能の低下は、心臓や肺だけでなく様々な臓器におきてくるでしょう。
 心臓や肺の病気をお持ちの方は、今のところ元気でも、できるだけ自分の身体の変化に気を配り、臓器不全が軽いうちに手を打っておくのが得策です。心・肺に病気のない方は、できる限り後遺症を残す病気にならない予防が必要です。






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