すこやか生活

第10巻11号 

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命が延びたため、タバコの害がクローズアップされてきたのです。
 実際、タバコに限らず、心臓弁膜症や結核の後遺症をもつ方が70歳、80歳の声を聞くと急に息切れや動悸などの心肺機能障害の症状を呈する例をよく見ます。タバコの害は、自覚しにくいものなので気がついたときには手遅れです。
 最近話題になっているメタボリックシンドロームという動脈硬化による血管障害をきたす状態があります。これは内臓肥満に加え、@血圧が高め(高血圧の前段階)、A高血糖(糖尿病の前段階)、B脂質代謝異常(高コレステロールや高中性脂肪血症)の複数

のリスクが加わった状態です。メタボに該当する方がタバコを吸うと、ますます動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞をおこす可能性が高まります。このような観点から、20年度から始まった特定健診では、内臓肥満に一つでもリスクのある方がタバコを吸っている場合、禁煙指導を含め積極的指導という時間をかけたダイエット教育を行うように定められました。
 メタボリックシンドロームも人生50年の時代にはあり得ないことでした。現代の医療や社会の進歩の結果、長寿社会となり、よりよい高齢期を楽しむ世の中となりました。これが最近、タバコの害をよく耳にする大きな理由です。






喫煙とガン

 タバコが肺ガンの主な原因になっているのは周知の事実です。それではどのくらいタバコが悪さをしているのでしょうか?次の表をご覧ください。多くの主要なガンで喫煙による悪影響が見られます。
 とりわけタバコの煙にさらされやすい場所ほどガンの発生率が高まるようです。タバコの煙の入り口にある喉頭、咽頭、口腔、肺などは直接タールなどの発ガン物質が付着したり吸い込まれます。また、口に付いたタールは飲み込まれて食道、胃へと流れ込みます。これら以外でもほとんどのガンで喫煙者ほどガンによる死亡が多い傾向にあります。また、タバコを吸う本数が多ければ多いほどガンになる危険度は増加し

ます。男性の肺ガンでこれを見てみると、平均すると4.45倍ですが、35本以上吸う人は8.4倍、25〜34本では7.1倍、15〜24本では5.4倍、5〜14本では3.3倍、1〜4本では2.5倍となっています。
 受動喫煙でも同様な傾向が見られ、タバコを吸わない夫を持つタバコを吸わない婦人の肺ガン死亡率を1とすると、ご主人が20本以上吸っていると肺ガン死亡率が1.91倍、15〜19本で1.53倍、1〜14本で1.42倍、そして以前吸っていたご主人を持つ人で1.36倍に上ります。自分が吸わないのに肺ガンになったのではたまりません。受動喫煙をさせられている方は是非とも相手の方に禁煙を勧めましょう。

日本人男性の喫煙によるガン死亡

 タバコを吸わない人のガン死亡者を1としたときの、各ガンの死亡者の倍率。
 例えば、タバコを吸わない人が喉頭ガンで死亡する率が0.2%だとすると、タバコを吸う人の喉頭ガンの死亡率が6.5%だった場合。
6.5÷0.2=32.5倍 となる



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