動悸とその対応

 動悸を起こす3つの原因について少し詳しく見てみましょう。
@心拍数が多い場合
 原因は大きく分けて2つあります。交感神経が興奮している場合と、酸素を運ぶ機能が低下している場合です。
A)交感神経の興奮:激しい運動や強いストレスなど、体が活動したり有事に対応するときに働く神経です。脳や全身に十分酸素を供給するために心臓をフル回転させるので、心拍数が増えます。全力疾走をして心臓が破裂しそうに感じるのはこの現象です。甲状腺ホルモンは交感神経系の働きをアシストするホルモンなので、バセドウ病などでT3T4などのホルモン分泌が増えると、交感神経が興奮したのと同じ状態になり、動悸を覚えます。これらはアテノロールなどのβブロッカーによって、交感神経の働きを鎮めたり、抗甲状腺薬でバセドウ病の治療を行うことで解決します。
B)酸素を運ぶ機能が低下している:心肺機能に問題がある場合または、貧血があり肺で取り入れた酸素を結合して末梢へ運ぶ赤血球が不足している場合です。心臓弁膜症(僧帽弁や大動脈弁の狭窄や閉鎖不全)や心筋症などの原因で起こる心不全、タバコが原因で肺を痛めるCOPDや結核の後遺症などの呼吸不全なども主な動悸の原因です。子宮筋腫や子宮内膜症などの月経過多、胃潰瘍や潰瘍性大腸炎などの消化管出血、偏食による鉄欠乏性貧血、胃切除後や抗ガン剤などによるビタミンB12不足が原因の大球性貧血などがよく見られる貧血の原因です。
 心臓や呼吸器疾患の場合はそれぞれ疾患に対応した治療を行いますが、酸素を吸い続けなければ対応できない場合もあります。出血は各疾患に応じた治療を行うとともに、フェロミアなどの造血剤で鉄分を補います。造血剤は人によって気

持ち悪くなったり便秘をするので、飲めない人には子供用のシロップを量を加減して飲んだり、注射で補います。
A不整脈がある場合
 多くの期外収縮は定期的な心拍より早く拍動がおこります。規則正しい心臓の拍動は、心室に十分な血液が溜まった時点で心筋が収縮し効率よく血液を送り出します。ところが期外収縮のように早めに心室が収縮してしまうと、心室に血液が十分溜まる前に押し出すので、十分な拍動とならず、空振りに終わります。十拍に一度の期外収縮であれば、心臓のポンプ機能は数パーセント低下するだけで済むでしょう。ところが、その頻度が増すと血液を送るポンプとしての機能が不十分となります。典型的なのは心房細動で、心臓の拍動が全く不規則になり空振りを連発します。こうなってしまうと、ポンプ機能が2割3割低下するため、心不全に陥ります。心拍数も増え、少し動くだけでも動悸を覚えます。なお、期外収縮が連発する発作性上室性頻拍症は、数秒から数十秒、空振りが続くため、心不全になったり脳が酸欠となり意識を失う場合があります。不整脈に対しては抗不整脈剤が使われてきましたが、不整脈を起こす心筋内でショートしている電流の流れをカテーテルで解消するアブレーション治療も心房細動等に対して普及してきました。
B異常が無いのに心臓を意識する場合
 ストレスが多かったり、心配性の方に時々みられます。心配して心電図をとっても異常がなく、24時間心電図でも概ね大きな問題はありません。これは心臓神経症といわれ、精神安定剤などで治療されてきました。ただ、一分間に80拍程度と全体的に心拍数が多かったり、一時的に心拍数が増えている場合もあります。交感神経を含む神経が高ぶっている状態なので、心臓の検査をして大きな異常がないことを確認すれば安心です。その上でどちらの場合も、心拍数を減らすアテノロールのようなβブロッカーを服用すると、動悸が去って落ち着くことが多いようです。

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